全身脱毛には、想像しやすい「やけど・痛み」だけでなく、VIOデザインの後悔や生活制限などの意外なリスクもあります。
本記事では重要度・発生頻度・予防策を併記し、医療的観点から12項目を徹底解説します。
なお、レーザー脱毛はFDAの定義上「永久減毛(permanent hair reduction)」であり、完全な永久脱毛を保証するものではありません。

これから医療脱毛を検討されている方の参考になれば幸いです。
デメリット一覧(重要度順のサマリー)
発生頻度の目安:高(>25%)/中(10–25%)/低(1–10%)/稀(<1%)
デメリット | 重要度 | 発生頻度 | 主な予防策 |
---|---|---|---|
1. 生えにくさによる後悔(VIOデザイン) | 中 | 中 | 段階的に減毛→形調整/事前デザイン確定 |
2. 痛み | 中 | 高 | 冷却・表面麻酔/機器・設定の最適化 |
3. 施術期間中の日焼け禁止 | 中 | 中 | SPF30+毎日/屋内外タンニング回避 |
4. 直後〜48hの運動・高温環境NG | 中 | 中 | 発汗・摩擦・サウナ・長風呂回避 |
5. やけど(水疱・びらん) | 高 | 稀 | 日焼け回避/熟練施術者・適正設定 |
6. 多毛化・硬毛化(PH:逆説的増毛) | 中 | 低〜中 | 次回設定見直し/機器切替/部位選択 |
7. 毛嚢炎(にきび様発疹) | 低 | 低〜中 | 清潔保持/摩擦回避/必要時は受診 |
8. 乾燥・かゆみ | 低 | 低 | 保湿徹底/刺激性化粧品の一時休止 |
9. 色素変化(沈着・脱色) | 中 | 低〜稀 | 紫外線回避/炎症時は早期受診 |
10. ワキ汗が増えた「感覚」 | 低 | 低 | 吸汗素材・外用制汗剤などで対処 |
11. 恥ずかしさ(主にVIO) | 低 | 低 | 同性対応・個室・ドレーピングの確認 |
12. 通院・生活上の制約 | 中 | 中 | 季節・イベント・スポーツに合わせた計画 |
各デメリットの詳細と予防策
1. 生えにくさによる後悔(特にVIOデザイン)
施術が進むほど毛は長期的に生えにくくなります。VIOを全処理(いわゆるハイジニーナ)にした後で「少し残せばよかった」と感じるケースも。初回から全処理を固定せず、減毛→形の調整→最終判断の順で段階的に決めるのが安全です。
2. 痛み
黒色(メラニン)に反応するため、毛が濃い部位ほど痛みが強い傾向。VIO・ワキ・ヒゲは痛みが出やすい代表部位です。
- 軽減策:強力冷却/表面麻酔(医師判断)
- 機器・設定最適化:波長(アレキ/ダイオード/Nd:YAG)やパルス幅・フルエンスを肌タイプ別に調整
3. 施術期間中は日焼け禁止
日焼け肌は合併症リスクが上がります。
屋内外のタンニングを避け、SPF30+以上のUVケアでを毎日保護しましょう。



基本的に日焼け直後は肌が敏感になるので施術不可です。
4. 直後〜48時間の運動・高温環境の回避
- 避けるもの:激しい運動、サウナ、長風呂、プール、飲酒、大きな摩擦
- 理由:炎症悪化・毛嚢炎の誘因(発汗・血行促進・高温)を避けるため
5. やけど(水疱・びらん)
頻度は稀ですが重篤性が高い副作用です。
日焼け回避・事前のスキンチェック・経験ある施術者でリスク低減できます。



異常が出たら速やかに受診してください。
6. 多毛化・硬毛化(パラドキシカル・ヘアリグロース)
照射部や周辺で毛が濃くなる/増えることが稀に報告。顔・頸・上腕などで起きやすいとされます。
多くは次回以降の出力・パルス幅・波長の見直しや機器変更で改善します。
7. 毛嚢炎(にきび様発疹)
多くは軽症で一過性。清潔保持・擦らない・湯あたりを避ける。
必要時は医師が外用薬などを選択してくれます。
8. 乾燥・かゆみ
照射後は一時的に水分が奪われやすい状態です。



当日から保湿を徹底し、刺激性の強い化粧品は数日休止しましょう。
9. 色素変化(沈着・脱色)
炎症後色素沈着は強い紫外線・乾燥で助長されます。そのため遮光や保湿が最重要です。



暗肌でも安全施術は可能ですが、より慎重な設定と経験が必要になります。
10. ワキ汗が増えた「感覚」
エビデンスは限定的ですが、毛がクッションしないため汗が肌に触れる感覚が強まることがあります。



吸汗速乾の衣類や制汗剤で対応してみましょう。
11. 恥ずかしさ(主にVIO)
同性スタッフの対応・個室・ドレーピングなど配慮が整った施設を選びましょう。



基本的に医療機関は年間多数の症例に慣れており、タオルなどで配慮した施術を受けられます。
12. 通院・生活上の制約
- スポーツ期・リゾート期(強い日差し)は開始時期を調整
- 予約間隔(4–6週目安)とイベント日程を逆算
効果と回数の目安(現実的なライン)
医療脱毛では、1回目から10–25%程度の毛量低下が見られることがあり、2〜6回で見た目の変化を実感する方が多いです。
終了後も長期的な減毛維持が期待できますが、体質や環境変化でメンテナンスが必要になる場合があります。
安全に受けるためのチェックリスト
- 事前:直近の日焼け回避(屋内タンニング含む)/毎日SPF30+/服薬・既往歴を必ず申告
- 当日〜48h:激しい運動・サウナ・長風呂・プール・飲酒・摩擦を控える/冷却と保湿を徹底
- 機器・体制:肌タイプに適した波長(アレキ・ダイオード・Nd:YAG等)と経験値のある医療者/異常時は速やかに受診
よくある質問(FAQ)
Q1. 全身脱毛の副作用は?
赤み・むくみ・軽いひりつきが一般的で、通常1〜3日で軽快します。稀にやけど・色素変化が起こり得るため、日焼け回避と適切な設定が重要です。
Q2. 暗い肌色でも受けられますか?
適切な機器・設定と経験があれば対応可能です。ただし日焼け直後は不可が原則。個別に医師へ相談を。
Q3. どのくらい痛いですか?
部位・毛量・機器で差があります。VIO・ワキ・ヒゲは痛みが出やすいため、冷却・麻酔・設定最適化で軽減します。
Q4. 施術後のNG行為は?
当日〜48時間は、激しい運動・サウナ・長風呂・プール・飲酒・強い摩擦を避け、保湿と遮光を徹底してください。
Q5. 多毛化・硬毛化が不安です。
頻度は低〜中。起きた場合は次回以降の設定見直しや機器変更で対応可能なことが多いです。必ず変化を申告してください。
参考文献・出典
医学出版:美容皮膚医学BEAUTY第27号(Vol.4 No.2, 2021)
林美保、古賀俊彦、古賀一雄、ほか : Nd-YAGレーザーの近赤外領域効果について-第1報-日本レーザー医学会誌6 (3) 163-166 1986
特定非営利活動法人 日本レーザー医学会:日本レーザー医学会誌 31 (1), 53-60, 2009
医政医発第105号:医師免許を有しない者による脱毛行為等の取扱いについて
独立行政法人国民生活センター:なくならない脱毛施術による危害(発表情報)_国民生活センター
LIEW, Se Hwang. Laser hair removal: guidelines for management. American journal of clinical dermatology, 2002, 3: 107-115.
GAN, Stephanie D.; GRABER, Emmy M. Laser hair removal: a review. Dermatologic Surgery, 2013, 39.6: 823-838.
Anderson RR、Parrish J: 選択的光熱分解: パルス放射線の選択的吸収による精密な顕微手術、Science、220: 524-527.1983
日本皮膚科学会:美容医療診療指針
日本医学脱毛学会:脱毛を考えていらっしゃる患者さんへ
American Academy of Dermatology: Laser hair removal(準備・アフターケア・合併症)
U.S. FDA: Permanent hair reduction(定義・評価)
Snast I, et al. Paradoxical Hypertrichosis after Laser and Light-based Hair Removal: Systematic Review & Meta-analysis
免責事項:本記事は一般的情報の提供を目的としています。最終的な施術可否・方法は医師の診察に基づき決定されます。